2024年7月
前回5月末からしばらくお休みしました。5月、6月は学会やNPOとうほく整形外科総会などの他に、教室員や専攻医との面談があり忙しくしていました(言い訳)。7月も学会や研究会、医局説明会などいろいろありますし、忙しいのはあまり変わりませんね。
6月も末になってきたら、今年も暑くなってきました。昨年の6月はとても暑かった記憶があるのですが、データを見てみると仙台では真夏日が今年と同じ3日でした。7月が猛烈な暑さで7月24日以降は毎日真夏日、猛暑日も3日でした。僕は60年近く仙台で暮らしていますが、昔はこんなに暑くなかった。せいぜい七夕周辺の10日ほどが30℃前後になり、しかし夜はそこそこ涼しくて、扇風機があればまあ事足りる、という感じでした。それが昨年は仙台でも66日も真夏日!まさに地球温暖化です。今年春にエルニーニョ現象が終息しつつあると報道されました。にわか勉強によれば、エルニーニョ現象は太平洋赤道付近の日付変更線付近から南米沿岸にかけての海水温が平年より高くなる状態が1年程度続く現象で、日本は冷夏・暖冬になると言われています。これと対で語られることが多いラニーニャ現象では、エルニーニョ現象と反対に太平洋赤道付近の日付変更線付近から南米沿岸にかけての海水温が平年より低くなり、夏は異常な猛暑、冬は寒くなると言われています。気象庁の「エルニーニョ監視速報」によると今年はラニーニャ現象が発生する可能性が高いそうです。今年の夏も暑くなりそうです。昨日(7月4日)は静岡で39.3℃を記録したそうです。うんざりですね。
さて、先日2024年度の関連病院代表者会議がありました。手外科専門のある先生に「宮城県内で形成外科がある病院では手根骨より末梢の外傷などは形成外科が治療している」、と聞いていたので参加した先生方に尋ねてみました。確かに仙台市立病院や東北労災病院など整形で手外科の手術をしている病院もありますが、手根骨より末梢はほぼ形成外科が行っている病院もありました。日整会の専門研修カリキュラムによれば、最低1例以上経験すべき手外科の疾患として、手の先天異常、関節リウマチ、腱鞘炎、手のOA、撓骨神経麻痺、正中神経麻痺、尺骨神経麻痺、TFCCなどの手関節靭帯損傷、手関節・手部の骨折・脱臼、が記載されています。
手外科はSterling Bunnelが「形成外科、神経外科、整形外科を含む」と述べていますが、本邦では整形外科がいち早く取り入れたようです(藤田晉也、同窓会誌第9号)。宮城県の場合、手外科治療を語るうえで、形成外科との関係は避けて通れません。本学の形成外科はもともと整形外科で手外科診療を手掛けていた岩内省三先生と藤田晉也先生が1963年教室内に形成外科診療班を立ち上げたのが始まりです。藤田先生はその後整形外科助教授まで昇任され、診療科としての形成外科を担当されました(講座は整形外科。教授は整形外科が兼任)。本学で形成外科が独立した講座となったのは1999年と比較的最近です。このような関係から手外科治療を「整形外科内の形成外科診療班」が行う時代が長く続きました。当科第4代櫻井 實教授やその薫陶を受けた宮坂芳典先生や信田進吾先生は上肢・手という印象がありますが、基本的には末梢神経が主戦場と思います。僕が知る限りでは、同門の整形外科(形成外科診療班ではない)で本格的に手外科を始めたのは市中病院では牧野睦夫先生であり、大学では現在開業している後藤 均先生だと思います。長谷川和重先生や佐々木大蔵先生、八田卓久先生が後藤先生に続きました。
このような歴史から宮城県の手外科治療に形成外科が大きく関わるのは仕方がない側面があります。ただ、先にも述べたように日整会では手外科分野で経験すべき症例をたくさん記載していますが、一方日本形成外科学会のHPを見ると手外科の疾患で記載されているのは「切断指」だけです。つまり宮城県以外では切断指以外の手外科疾患は整形外科が扱っていると考えられます。ご存知のように形成外科は整形外科に比べ教室員が少なく、整形外科の関連病院全てに形成外科があるわけではありません。形成がない病院では整形外科が手外科を担わなければないでしょう。となると専攻医の先生にはやはり手外科も勉強してもらわなければなりません。形成外科がある県内の施設では、院内のルールや手術枠、診療科の売上げ、指導する側の問題などもあると思います。そこでいきなり手外科は整形、と言っても混乱するだけです。従って、整形外科専門研修プログラムを回る際に、宮城県以外の病院で勉強する、あるいは県内でも手外科をやっている病院で研修するなど、専攻医時代に手外科に触れられるようにしたいと思います。手の外傷が整形外科外傷全体の1/3を占めます。大事な整形外科の診療分野だと思います。形成外科と協力しながら、患者さんによりよい医療を提供したいですね。
相澤 俊峰