東北大学整形外科学教室

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不定期コラム 徒然ではないのですが…2

2023年5月

5月11日から14日まで、パシフィコ横浜で第96回日本整形外科学会学術総会が開催されました。本学会は参加者数が約10,000人と日本で最も大きな学会の1つです。当科からも30演題が採択され、各人立派に発表していました。心強い限りです。過去3回と異なり、パーティションなしの会長招宴やアルコール付きの全員懇親会、野球やサッカー大会の開催など、形式的には新型コロナの感染拡大以前に戻っており、通常(以前)の学会の楽しさを思い出しました。

ただ一つだけ残念に感じたことがあります。当科の馬場 一慈先生の発表(口演)が学会最終日、日曜午後の最終セッションの一番最後でした。内容は当科と本学金属材料研究所が開発したTNS合金製の人工股関節の中期成績で、質問もいくつかあってそれなりの盛り上がりでしたが、問題は聴衆の数です。会場の前半分には座長と演者しかおらず、メーカーの人を入れても10人ちょっと(内半分は本セッションの演者)でした。非常に寂しいものがありました(写真)。

この学会は2,489演題の応募があり、口演の採択は574演題と抄録集には書いてあります。口演の採択率は23%です。選り抜かれた演題の聴衆が10人ちょっととは・・・。勿論学会最終日、特に最終日が日曜の場合、明日も仕事がありますから、一刻も早く家に帰りたい、みんなそう思うでしょう。学会を主催する側は1演題でも多く採択したい、発表してほしいと思いプログラムを作ります。当科で主催した第90回の学術総会でも同様で、日曜の17:55までポスターセッションがありました。でもこうして聴衆が少ない口演を見ていたら、「これって仕方がないことなのかなあ?」と思いました。

来年から医師の労働時間に制限が設けられます(いわゆる働き方改革です)。問題の1つが学会参加が労働時間内か自己研鑽かということです。施設・立場により扱いは様々でしょうが、自身で病院を経営している医師以外は、僕は全て勤務に当たると思っています(個人的な意見です)。厚労省の労働時間の定義は「使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に当たる時間は労働時間」と書いてあります。大学(大学病院)は研究機関でもありますから、研究の一端である学会発表は当然労働時間でしょう。国公立大学の教授や学部長、総長なら使用者にあたるか、そんな事はありません。教授や医学部長、総長も勿論自身の知的好奇心もありますが、一方で大学、厚労省、文科省あるいは国からの、「業績上げろ」、「大学(学部)を有名にしろ」、「科学立国に貢献しろ」など様々な「黙示の指示」がないとは言えないと思います(線引きは大変難しい場合があるとは思います)。公立私立に関わらず病院勤務医も、病院からの「黙示の指示」が全く無くとも、発表すれば病院の実績になり、また病院の名前で発表することで同じ整形外科医に病院名を知ってもらう機会=宣伝となります。立派な労働時間ではないかと思います。

学会発表が労働時間であれば、学会自体勤務時間外である土日を避けるべきです。土日に余裕があれば、「明日の診療のために一刻も早く帰ろう」と思う気持ちが少なくなるのではないでしょうか。患者さんを治療するのが本来の使命である医師が、平日に長期に病院を空けるのに抵抗があるのもわかります。また、土日を避けても金曜の最後のセッションは、午前中より聴衆が少ないでしょう。いろいろ難しいのは重々承知ですが、みんなが聞きたがる=必要単位や人気講師の講演を最後にするなどして、なんとか最後のセッションでも聴衆を残すようにしてもらいたいと思います。せっかく23%に選ばれた演者が寂しい思いをしないようにするのも必要ではないか、と馬場先生の発表を聞きながらつらつらと思いました。

座長と演者=馬場一慈先生だけの会場。このほかに10名ちょっとの聴衆がいましたが、寂しいです。

相澤 俊峰

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