2025年6月
4月から6月前半は学会シーズンでした。今年は日本脊椎脊髄病学会が千葉市幕張メッセ、日本整形外科学会総会が東京国際フォーラム、東北整形災害外科学会が新潟市の朱鷺メッセで行われ、参加してきました。会場が東日本に限られていたとは言え、幕張は東京からは結構行きにくいし、新潟はせっかくトキエアを使おうと意気込んでいたら、直通便があっという間になくなっているなど、やはり疲れました。加えて日本脊椎脊髄病学会は今回「スター・ウォーズ ・セレブレーション・ジャパン」とかぶったため、幕張にホテルが取れず、多くの参加者が苦労したようです。僕は幸い学会がホテルの予約をしてくれたので、ハイシーズン価格でかなり高額でしたが、浦安市に泊まることができました。東京もインバウンドのためか、ホテルは非常に高くなっているように感じました。東京国際フォーラムは学会場としては使いにくく、会場費とホテル代を考えると、「もう東京で大きな学会をしなくてもよいのでは?」と思います。そうでなくとも日本の富は東京に集中しています。日整会クラスの学会となると、運営費7億円、メーカーと合わせると2万人以上が参加します。その半分が東京に平均3泊すると、1泊1万円として3万、夜の食事に1回5000円使ったとして1.5万円、最低で1人4.5万円を東京に落とします。すると1万人で4億5千万円が東京の街に消えていくわけです。これは最低限です。地方都市であれば、3日でこんな金額が落ちれば万々歳ですよね。東京一極集中の打開を学会から始めるのもありでは、とも思うのです。まあ、開催できる会場があることが前提ですが。そういう意味では、仙台は候補ですね。東京から新幹線で1時間半、地下鉄直結の学会場という利便性、気候の良さと食べ物の美味しさ、安さから、僕の知り合いは仙台での学会に来たがる人が多いようです。残念なのは学会場が少し小さいこととホテル数が少ないこと。今の倍くらいの大きさの学会場にすればよかったのです。毎年日整会総会クラスの学会が行われれば、多くのお金が仙台に落ちますし、そうすればホテル業界も仙台へもっと進出するでしょう。札幌に大きな学会場がないことを考えれば、東京以北の学会を仙台で独り占めすることも可能だったと思います。国際センター展示棟を作る時に(?)、もっと大きな箱を作る意見もあったと聞きますが、仙台市の見通しが甘かったと思いますね。
僕も若い頃は東京での学会を楽しみにしていました。今回の同門会でも医局員が探してくれた東京駅前の素敵な居酒屋さんで、きれいな景色を見ながら昔一緒に働いた五味渕先生などと楽しい時間を過ごしました。しかし、この歳になると、東京はどうも億劫になってくるのです。東京には何でもありますが、何でもあり過ぎるし、何より人が多すぎます。仙台生れ・仙台育ちの僕は人酔いしてしまいそうになり、いつも圧迫・圧倒されてしまいます。地方の特色のある料理やお酒をのんびり楽しみたいなあ、と思うのは歳を取った証拠でしょうね。新潟の学会は良かったですね。朱鷺メッセは使いやすい会場だし、食事もお酒も美味しい。ホテルも高くないし最高ですね。新潟は毎回車で行くのですが、磐越道ができて格段に便利になりました。新人の頃、いわきから国道を通って4時間以上かかったのに、今は仙台から3時間ちょっとで行けます。以前、現在某S市内の赤十字病院に勤務しているO先生と行ったときに彼が覆面Pに捕まったのですが、やはり磐越道は覆面Pが多いような気がします。帰りに追い越しかけようとしたら覆面Pだったので、あわてて速度を落として事なきを得ました。暫く行くと他の車が覆面Pに捕まっていました。磐越道、恐るべし!
最近の学会は専門分化が進み、自分の分野以外の発表を聞くと自分の知識がアップデートされていないことに愕然とします。病態の解明も進み、また治療法も昔勉強したものとは大違いです。東北整災のような学会だと、うちの専攻医の発表を聞くついでに他の演題を聞くことも多く勉強になります。専門バカではいけないと思うので、総合学会は良い機会ですね。また、教授になって他の分野を専門とする教授や准教授の先生の講演の座長をすることが多くなり、これも勉強になります。先日長崎大学の尾崎 誠教授のロボット手術の講演を聞きました。アメリカではTHAのロボット手術は全体の10%未満で頭打ち、TKAは全体の10数%でまだ右肩上がりに増加していると話されていました。アメリカのトレンドは数年遅れで日本に来ることが多いので、おそらく日本もこうなっていくのだろうなあ、と思いながら拝聴しました。
発表も最近はかなり洗練されていますね。比較研究が増え、大規模コホートの研究も多くなりました。きちんと統計処理を行ったデータを出してきます。ただ、まだ文章をスライド化したプレゼンが結構あって、これは同門の先生もご注意ください。スライドは視覚に訴えるものです。文章だけのスライドは受講者・聴衆がスライドの文字を目で追ってしまい、話が入ってこないことになります。また図やグラフに比べ内容がパッと見てわかりにくい。なるべくダイレクトに視覚に入り、講演を“聞かせる”スライドにする事が大事です。プレゼンも「こわごわ」という先生もいますが、多くは堂々として質疑応答にも「ご質問いただきありがとうございます」からはじまり、スラスラ答える若い先生が増えました。自分の新人の頃と比べると非常に頼もしい。できれば発表する前に論文の草稿まで作っておくことをお勧めします。論文を書くためには、イントロ、考察で十分な文献的検索が必要となりますし、データを解釈し、過去の報告と比較しておかなければなりません。ですので、論文の草稿まで書いていれば、学会では、よっぽど意地の悪い質問でなければ大概答えられます。発表が終わったら、質疑応答の内容で加えるべきものがあれば考察等に書き加え、指導医に見せる。論文提出が早くなります。
そうそう、書くの忘れました。今年の東北整災では暫くぶりに、野球で一勝しました。素晴らしい!準決勝の岩手医科大学戦では、JCHO仙台病院の勝又勇樹先生が左中間にホームランを打ちました。ものすごい当たりでした。試合には残念ながら負けましたが、来年こそは2017年の地元枠以来の日整会本戦に行けるのではないか、と期待してしまいます。ぜひ、頑張ってください。
相澤 俊峰