2025年12月
早いもので今年のお正月は地震も飛行機事故もなくて良かったなあと思ってから、12か月が過ぎようとしています。この1年間は教室員・同窓会員の皆様にはどのような1年だったでしょうか?お正月に立てた目標を達成できたでしょうか?
教室では今年もいろいろなことがありました。メインは9月の第74回東日本整形災害外科学会の開催でしょう。学会のプログラムとともに、同窓会の先生方からご寄贈いただいた多くの日本酒を振舞った晩餐会や全員懇親会も、参加者からは非常に好評でした。また、8月には東北大学整形外科談論会70周年記念式典を行いました。来年の日整会基礎学術集会の会長選挙のはずみになればと思います。研究では、後弯症の歩行解析、次世代放射光ナノテラスなど、新しく始めた研究でも少しずつ成果が出てきました。英語論文の数もだいぶ増えました。来年も教室員の頑張りに期待しています。
個人的には2年目の日本脊椎脊髄病学会の理事に加え、5月からは日整会の理事も拝命し、毎月上京して理事会に参加しています。国内学会も結構行きましたが、中で印象的だったのは4月の日本脊椎脊髄病学会がスターウォーズセレブレーションジャパンという世界的なイベントと重なり電車で移動するのに苦労したこと、が一番です。幸い僕は学会の理事だったのでホテルを用意してくれましたが、同門の先生はホテルの確保にも非常に苦労したと伺っています。今年行った中では初めてだった松江市と富山市が良かったですね。いずれも街はコンパクトで中心にお城があります。松江城は現存12天守の1つで非常に大きなお城で、周囲のお堀や武家屋敷などと合わせて街並みに雰囲気があります。富山城は金沢100万石前田利家のお孫さん(嫡子利長(3代藩主)の子)のお城だからか小さめです。でも今年のニューヨークタイムズ紙で「2025年にいくべき旅先52カ所」に選ばれただけあって、路面電車が走る街並みはきれいです。両市とも日本海の海の幸が抜群に美味しい。また、東北整災が行われた新潟市はもしかしたら、今回が最後の訪問になるかもしれませんが(次回東北整災は2033年)、やはりお酒と食べ物が美味しいですね。こうしてみると今年印象に残ったのは日本海側ばかりです。大きな学会が東京、横浜、神戸など決まった場所で開催されることが多いため、行く機会の少ない地方都市が特に印象に残るのかもしれません。大都市はきちんと下調べをして行けば、見るべきところがたくさんあって、またそれなりの料金を出せば美味しいものがいくらでも食べられます。一方で地方都市は散歩気分で旧所名跡に当たりますし、ふらっと入った居酒屋で、安くて美味しいお酒と料理にありつける、という感じです。来年の学会だと弘前市、福岡市には期待しています。
最近、BSの「ケンコバのほろ酔いビジホ泊」という番組をよく見ています。30分番組なので、ちょっと一杯やりながらボーと見られるので気に入っています。全国のビジネスホテルに一泊し、その周辺の歓楽街で酒を飲む、というたわいも無い番組ですが、なかなか面白い(ケンコバの入浴シーンだけは余計なような気もします)。行ったことのない街、ある街、泊まったことのないホテル(たまにあるホテル)が映されるので、この次学会行ったらここ泊まろう、とか考えて見ています(まあ、忘れてしまうのですが)。この番組で結構衝撃的なのがホテル代です。東京だと駅近のチェーン店でも2万以上することがあり、一方で地方都市は6,000~8,000円くらいです。東京のホテル代の高さに改めて驚きます。料理に関しては、東京では高級店には入らないので、地方との差があまりないようですが、やはり地方の「地のもの」はそこに行かなければなかなか食べられず、美味しそうですね。僕は60年以上生きてきて、まだ全都道府県制覇を成し遂げていません。残っているのが、山口県と愛媛県です。何か学会ないかなあと思っていますが、なかなかないですね。
年末のこの時期は人事の季節でもあります。各病院、教室員や同窓会員、大学の全てがウィンウィンウィンになるようにと考えてはいますが、なかなか思い通りには行きません。どこの会社でも人事は難しいようですが、医局人事も年々難しくなっています。僕は若いうちはいくつかの異なる病院で働いて、いろいろなオーベンのやり方を見た方が良いと考えています。ですから、比較的若手の先生には2~3年での異動を打診しています。そうしているうちに、手術ばかりでなくいろいろな診療技術が高まりますので、次に自分が適応や術式を決めて手術できる、病院の科長や副課長になってもらいたい。そして自分が下を育てる側になる。中には臨床研究に長けている先生もいるでしょうから、そのような先生は大学やボリュームセンターで腕を振るってもらう。十分な入局者が10年続けば、このように絶え間なく後人を育てられるようなシステムを作れると思いますが、現実にはそうもいかないため、あーでもない、こーでもない、と頭を悩ませています。また、皆さん自分の生活がありますから、打診された異動先が意にそぐわないときもあるでしょう。亡くなられた菊地臣一福島県立医科大学名誉教授がよく教室員に仰っていたという「置かれた場所で咲きなさい」(渡辺和子著)という考えは、現在は受け入れ難いかもしれません。しかし、「置かれた場所」は自分で選んだように見えても、そこに「置かれた」のには理由があるはずです。「置かれた場所」で一生懸命仕事をして周囲に認められてこそ、次の自分の行きたい場所に「置かれる」のだと思います。大事なことは周りに認められるような仕事をすることです。それは何もアカデミックなことばかりではなく、手術の技量でも後輩の指導でもそうでしょう。「置かれた場所」でベストを尽くし、周りに認められる仕事をしてください。人事では、医局の都合と各個人の希望が一致しないこともあります。そのような時には数年先までを含めて公平な人事とは何か、を考えているつもりです。この12月は学位審査(今年は4つも当たってしまいました)と人事で本当に頭が痛いところです。まあ、泣き言ばかり言っていられません。僕が「置かれた場所」はここなので、何とか皆さんに受け入れられるうまい知恵を出したいと思います。
これが今年最後のコラムになると思います。皆さま、良いお年をお迎えください。
相澤 俊峰