2025年2月
正月明けに教授になって4回目の人事が無事終了しました。医局員(大学外も含む)、関連病院、大学がwin-win-winになるようにしたい、と常々考えていると昨年の8月の本コラムで書きましたが、今年はどうだったでしょうか?自分なりに相当頭を悩ませてましたが、この3者が何とかやっていける範囲内の人事であったとは思っています。全国には医局員に「好きな病院で好きなサブスペやっていいよ」というような大学もあるようですが、そのような大学は同じ都府県に複数の医学部があります。宮城県(+県外の一部)の地域医療を(東北医科薬科大学ができたとはいえ)ほぼ東北大学一校で担っているうちとは状況が異なります。自分の好きなことを自由にできるということは、多くの場合、自分が嫌なこと・したくないことをしてくれている医師が(その人はもしかしたらそれが好きかもしれませんが)どこかで頑張ってくれている、ということでもあります。みんなが「自分な好きなこと」をやって、医局員、関連病院、大学がwin-win-winになるようなパズルが組み立てられれば一番いいのですが…。
さて、ほぼ終了したことがもう1つあります。学位論文です。現在最終審査の真っ最中ですが、全員ほぼ合格をいただきました。従って、今年も5人の大学院の先生と10月に論文博士を取得された高橋康平先生の6人が、新たに医学博士になります。おめでとうございます。これも一昨年の11月に書きましたが、やはり大学院生の皆さんはイチローばりにギリギリまで引き付けますね。10月の一次審査もですし、1月の最終審査も提出期限の数日前に複数の院生から確認をお願いされました。来年は大学院生が少ないので、少し楽かなあとは思いますが、こればかりはわかりませんね。データが出たら早めに論文を見せてくださいね。
2月のはじめに 医用物理学分野、国際放射光イノベーション・スマート研究センター、多元物質科学研究所教授の権田幸祐先生にご案内いただき、ナノテラスを使用してきました。ナノテラスは量子科学技術研究開発機構(QST)が主体となり東北大学の青葉山新キャンパス内に設置した高輝度放射光施設です。宮城教育大学を奥へ数百メートル行くとやっと入口があって、そこから更に数百メートルでようやく円形の建物が見えます。地下鉄の青葉山駅から市営バスが30分に1本出ているようです。
ナノテラスとは、電子を光速近くまで加速して電磁石で曲げた際に放射されるX線を使って太陽光より10億倍明るい光を照射して物質の微細構造を見る「巨大な顕微鏡」のようなものだそうです。よくわからないので、取り敢えず骨や脊髄など運動器の構造がどのように見えるのか、森 優先生などと試してみました。さすがに最先端技術だけあって、事前に自分の顔認証を登録し、その人の顔を確認して入館が許可されます。内部は400mトラックと同じくらいの楕円形の巨大な体育館のようです。一緒に行った上原先生に、「暇なときにジョギングや筋トレもできるね。」と言ったら、「画像処理などで忙しくそんな暇ありません。」と叱られてしまいました。
使用するエネルギー域によって10本以上のビームラインがあり、それぞれで撮影できるものが違うそうです。5mm×1cmくらいの円柱の資料を右のようにセットし、X線ビームを照射し、10分くらいで撮像します。その後PC上でCTの「骨条件」、「腹部条件」などと同じように、金属や元素、ハイドロキシアパタイトなどの条件に合わせて最適な画像が得られるように加工します。骨を撮像するのは初めてだそうで、どんな画像が得られるか楽しみです。ナノメートル(10億分の1)レベルで物質を鮮明に可視化できるナノテラス。光学顕微鏡や電子顕微鏡と何がどう違うのか、今後いろいろと試していきたいと思います。
相澤 俊峰