2024年7月
7月13日から3泊4日で台湾に行ってきました。脊椎外科班が以前フェローで来た長庚記念病院(Chang Gung Memorial Hospital)の先生のところへ手術見学に行くのに便乗したのです。僕は日整会骨軟部で会議に出席しなければならなかったので、金曜の午後の出発で、手術見学はしませんでした。台湾で2−3か月に1回開催されている北部台湾脊椎外科カンファランスを、台湾―日本アカデミックカンファランスとして土曜の午前中に開催してくれ、橋本 功先生、高橋康平先生とともに30分の講演の機会をいただきました。前回外国に行ったのは新型コロナの感染拡大の前ですから、数年ぶりです。この間にパスポートの期限は切れ、円安が進み、特に海外での物価高が加速しました。パスポートを再取得して出発です。仙台空港発着の直行便でしたが、行きも帰りも台湾からの観光客で一杯でした。円安で日本に来やすいのでしょう。インバウンドが増加しているのがよくわかりました。
滞在中は台湾の先生方には本当に良くしていただきました。彼らの中の何人かは、フェローなどで仙台にも来たことがありますが、僕らがお世話した何十倍もの歓待ぶりでした。着いた当日は台湾脊椎外科学会の会長さん自らカラオケ(日本の歌の中国語バージョン)で盛り上がってくれましたし(八幡先生と橋本先生はカラオケ上手!)、土曜、日曜はマイクロバスに日本語のできるツアーコンダクターまでつけて(やたらと夜の世界を勧めてくる。これも国際交流ですが)、観光に連れ出してくれました(写真1)。本当に「申し訳ないな」と思いました。こういうところで人と人の繋がりができるのでしょう。彼らが僕らを歓待してくれるのも、国分正一先生、田中靖久先生、小澤浩司先生など歴代の先輩たちが何十年にもわたり、行ったり来たりして彼らと良好な関係を築いてきたからで、後輩である僕たちがその恩恵に預かれるわけですね。これからは仙台に来る先生をもっともっと歓待しようと思いました。
カンファランスは前半は僕たちの講演、後半は症例検討でした(写真2)。様々な症例が提示されましたが、気になったのがインプラントの使用過多です。提示された症例は難治例なので、僕たちでもインスツルメントを使用する症例がほとんどでしたが、本当にこの症例にこれするの、と思うような症例もありました。聞けばインスツルメントの使用は脊椎手術にはmustのようで、そこにはインスツルメントの業者、病院、医師のdeepな関係がありそうでした(もちろん深くは聞きません)。保険会社に治療方針を決められるUSAといい、これでよいのかと思いました。症状をもたらすoriginを治療し、安定した長期成績を出すのが外科手術の目標だと思いますが、病態を根こそぎ退治することで今の症状(originではなく)のみを改善させるような治療が、一部で行われているようにも見えました。もちろん、彼らには彼らの成功体験があり、それに基づく治療方針だとは思います。しかし、当たり前ですが、症状を呈しているoriginの精査とそれに対する治療が患者に対する対処の本質です。原因を除去し、そのために失われたものがあれば、必要なら再建する。但し、患者さんの生命はもちろん、生活上の優先度も考慮しなければなりません。状態によってはidealな手術が必ずしもbestな治療ではないのです。僕たちは症状のoriginに迫るアプローチをしなさい、と教わり、それが当たり前だと思っています。しかし、コスパ、タイパの面から世界ではマイナーになりつつあるのだとしたら、それは大きな誤りだと思います。異なる世界に異なるphilosophyがある、それを否定するものではありませんが、自分たちは揺るがない信念=治療の本質は何かを、常に意識していたいですね。
取り留めのない話になってしまいました。いずれにしても短い滞在期間でしたが、非常に楽しい台湾での講演旅行でした。外国に行くのに億劫になっていましたが、またどこかに行きたいと思うようになりました。
相澤 俊峰