東北大学整形外科学教室

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留学だより・海外の活動

名古屋掖済会病院 留学だより

藍澤一穂(2012年卒)

大学院卒業を機に、手外科・マイクロサージャリーの勉強の機会をいただき、2023年4月より名古屋掖済会病院でお世話になっております。

名古屋市は人口220万人の大都会で、関東、関西からのアクセスも良い交通の要所となっています。私の勤務する名古屋掖済会病院整形外科は、専攻医や私を合わせて今は医師13人体制で、手外科スタッフは3名常勤しています。病院はいわゆる「断らない救急」を掲げており、年間1万台以上の救急車受け入れのうち、全科合わせたうちの2割ほどが外傷患者です。また、病院の手術件数約4200件のうち2200件超が整形外科手術で、さらにそのうち半数を上肢の外傷が占めているのが特徴的です。愛知県は交通事故が非常に多いこと、当院が沿岸部の工業地帯にある3次救急病院であること、一次産業に伴う出稼ぎ外国人労働者が多いことから、毎日のように交通外傷や、労働に伴う上肢の外傷、重度四肢外傷が救急外来に飛び込んできます。それとは別に大腿骨骨折など一般的な骨折もどんどん来ますので、若手の先生たちの経験症例は桁外れとなります(その分働き方改革とは無縁の生活を送っていますが)。

私自身も多発(開放)骨折をはじめ、手部以遠の外傷、切断肢(指)、遊離皮弁・局所皮弁を要する軟部組織損傷…など、バリエーション豊かに経験させていただいています。執刀の機会も多く、上肢の手術だけで70-80件ほど執刀させていただきました。上級医と手術をするだけでなく、私と専攻医の先生と手術をすることも多く、少なからずスリルを感じつつ、大学院でなまった臨床能力を何とか取り戻しています。

ひとえに外傷といっても高エネルギー外傷や産業に伴うものは難しい骨接合や、軟部組織の治療などを見据えた治療戦略が必要です。また、外傷治療は“うまくいかない”こともしばしばで、リスクマネジメントやトラブルシューティングの方法は非常に勉強になっています。今まで自分が行ってきた治療法とは全く異なる手法や考え方を知ることができ、自分の未熟さを実感しながらも、非常に密度の濃い日々を送っております。もちろんすべての症例に触れることはできませんが、毎日のカンファレンスで情報を共有でき、活発な議論を交わしながら治療方針を決めています。

掖済会病院での勤務のほかに、名古屋大学の手外科手術の見学やカンファレンスの参加もさせていただきました。大学ならではの複雑な症例や慢性疾患、合併症の多い手術などを週2回の手術日に行っています。名古屋大学整形外科(名整会)は手外科教室が独立して存在する数少ない医局で若手も層が厚く、研究会やカンファレンスの質が非常に高いです。私よりもはるかに優秀な手外科の卵たちが大学や関連病院で研鑽を積んでおられます。

グルメや買い物には困らない名古屋ですが、6月の時点で日中は35度を観測し、8月は毎日猛暑日&熱帯夜で、北日本で30年過ごした身としてはなかなか日中に外出しようとは思えないのが難点です。名古屋での研修は2023年4月~12月の予定で、2024年1月~3月は新潟手の外科研究所病院での研修を予定しております。貴重な経験を無駄にせず自分の糧にできるよう努力したいと思います。また、私の国内研修経験が同門の若い先生方の刺激になり、医局の垣根を越えて広い視野と高い診療能力を身につけるきっかけになればと思っております。