ご存知のように2023年から日本専門医機構認定脊椎脊髄外科専門医(専門医)カリキュラムがスタートしました。会員の先生方には本専門医およびこの制度に伴う日本脊椎脊髄病学会(JSSR)認定脊椎脊髄外科指導医(指導医)の新規申請の変更について、よく理解されていないかもしれません。この4月からJSSRの専門医制度委員会と指導医制度委員会両者の担当理事を拝命したので、その要点について概説します。尚、詳細はJSSRのHPをご確認ください。
(1) 専門医制度について
●現在指導医をお持ちの先生で、専門医をまだお持ちでない先生は今年11月15日に行われる試験が移行措置での最後の試験になります。8月23日までが申請期間となっております。
●2025年から新規の専門医試験が始まります。まだ専門医を取得していない先生は機構認定の整形外科専門医の他に、
1.JSSRで認定された研修施設で2年以上の研修が必要です。
2.JSSRで認定された研修施設で所定の数の脊椎外科手術を執刀しなければなりません(下記は執刀)。
□腰部脊柱管狭窄症 20例
□腰椎椎間板ヘルニア 10例
□頚椎前方除圧固定術 10例
□頚椎後方除圧術 20例
この他、第一助手を含めて100例の症例が必要です。
●現在、東北大学関連で研修施設に認定されているのは東北大学病院、東北医科薬科大学病院、仙台西多賀病院、仙台整形外科病院、仙台医療センター、東北労災病院、東北中央病院、竹田綜合病院の8施設です。これ以外の施設で手術を経験しても、その症例を専門医試験に使用することはできません。上記以外で脊椎手術を行っている施設の先生は、基準を満たせば早めに施設登録をお願いします。
●脊椎外科に関する発表や論文が2編必要です。
(2) 指導医制度について
新制度での指導医の新規申請は2026年から始まります。新規申請に必要なのは
●日本専門医機構認定脊椎脊髄外科専門医
●執刀200を含む手術症例300以上(以下の執刀症例を含む)。
□腰部脊柱管狭窄症 20例
□腰椎椎間板ヘルニア 20例
□頚椎前方除圧固定術 10例
□頚椎後方除圧術 20例
□脊髄腫瘍、胸腰椎前方除圧固定術、頚椎後方固定術、腰椎後方固定術を最低1例、合計20例以上
これらの症例の経験は、JSSR-DBに登録された症例が望ましいですが、正当な理由があればどこで行ったものでも構いません。
●脊椎外科に関する筆頭著者としての論文3編を含む論文あるいは発表5編以上が必要です。
●継続申請では日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医も必要です。
【注意】
頚椎前方除圧固定術の症例数が多くなっています。本術式はJSSR-DBでは全脊椎手術の2.4%、東北大学のTUSS Registryでは0.4%に過ぎません。また2015〜2021年までに頚部術後に10例の気道閉塞による死亡事例が日本医療安全調査機構から報告されていますが、うち5例が頚椎前方除圧固定術後でした。医療事故防止の観点からも専門医の取得を急いで2年の研修期間で10例を経験する必要はありません。指導医は専攻医の技量を見極めて執刀を経験させ、症例が集積した時点での申請を心がけてください。
文責:相澤 俊峰