東北大学脊椎外科懇話会のご紹介

東北大学整形外科学教室 第7代教授の相澤 俊峰です。大学が主催する専門分野の勉強会としては、全国でも長い、35年という歴史を誇る東北大学脊椎外科懇話会についてご紹介します。

 

-医師の皆様へ-

本懇話会は下記の国分正一名誉教授の「ご挨拶」にも書かれているように、本学第5代教授である国分先生が大学の講師時代、1987年に創設されました。東北大学には脊椎外科の他にも、膝、肩、股関節、骨折など多くの勉強会、研究会がありますが、その嚆矢となったものです。このようなsubspecialityの勉強会は、今では全国の大学にいろいろありますが、1987年当時は「整形外科医は全部のsubspecialityができて当たり前」のような時代です。ですからこのような勉強会は全国的にもほとんどなく、非常に革新的な試みだったと思います。

本懇話会では主に以下の4つの活動をしています。

1. 会員の脊椎外科に対する知識の向上のための定例勉強会の開催

基本的には東北大学及び東北医科薬科大学の同窓会のための勉強会で、年に3回開催しています。テーマを決めて深く勉強し、また全国から新進気鋭の講師をお招きし、その先生が得意とする分野についての講演を聞き、日進月歩する脊椎外科の会員の知識のアップデートを図っています。

2. 会員の教育のための東北大学脊椎外科セミナーの開催

原則年1回秋に開催します。脊椎外科の診断、検査、手術、リハビリ等の基本を、主に専攻医を対象に教育指導します。東北大学は特に症候学、神経学的診断については、全国でも評価が高いと思います。その方法を若手の医師に丁寧に指導します。また、MRI全盛の現在となってはあまり行われなくなった侵襲性の検査手技や、脊椎の基本手術手技などを指導いたします。東北大学所属の医師ばかりでなく、全国から参加者を募りますので、興味のある先生は本懇話会のHPを御覧ください。

3. 多施設共同研究

日本では単施設で数多くの症例数を集めるのが難しいため、東北大学の関連病院でまとまった数の患者さんを集めて検討し、その成果を学会や専門誌で発表しています。発生頻度が比較的低い胸椎後縦靭帯骨化症や黄色靭帯骨化症、椎間関節嚢腫などを関連病院から集め、症例数の多い貴重な論文を数多く報告してきました。

4. 東北大学及びその関連病院の脊椎外科手術データベース(TUSS Spine Registry)の作成

2020年から日本整形外科学会の手術データベースJOANRが、2022年からは日本脊椎脊髄病学会のデータベースJSSR-DBが始まりました。私たちは1988年から東北大学および関連病院での全施設全例登録の手術データベースを作成し、その登録総数はこの34年間で約95,000件に登ります。宮城県内の病院の殆どが東北大学の関連病院のため、単位人口あたりの手術数などの疫学データも算出できます。この30年以上の縦断的な観察、単位人口あたりのデータの算出は、JSSR-DBにもまだできません。TUSS Spine Registryの強みと言って良いでしょう。これまで多くの成果を一流英文誌に報告してきました。

懇話会は幹事会によって運営され、原則3月、8月、12月に行われる定例勉強会への参加は自由です(参加費はございます)。脊椎外科に興味がある先生であれば、どなたでも参加できます。本HPで確認するか、協賛の大正製薬株式会社の担当者にご連絡ください。先生方のご参加をお待ちしております。

 

-患者さんへ-

東北大学脊椎外科懇話会のHPをご覧いただき有難うございます。長い歴史を持つ東北大学整形外科の脊椎外科医療をご紹介します。

超高齢社会の現在、多くの患者さんが歩行時の腰痛や下肢のしびれで手術を受けています。その原因の1つに腰部脊柱管狭窄症があります。腰の骨(腰部)の中にある神経の通り道(脊柱管)が狭くなる(狭窄)ために生じるもので、全脊椎外科手術の1/3以上をこの疾患が占めています。この疾患概念を日本に紹介したのが本学第3代教授の若松英吉名誉教授です。また、手足がしびれ、ボタンはめや箸使いなど指の使い勝手が悪い、歩行時にふらつく、脚がつっぱるなどの四肢に症状がある頚椎症性脊髄症という病気があります。その名の通り、首(頚椎)で脊髄が圧迫されて(脊髄症)、脳からの指令がうまく手脚に伝わらない、手脚の情報が正しく脳へ伝わらないために生じます。頚椎は7個の背骨からできています。そのどの背骨の高位で障害が起きているかを捉えることが非常に大切です。そのための神経学的診断方法を確立し、またこれに対する非常に優れた手術方法(前方除圧固定術)を考案したのが、本懇話会を創設した国分正一名誉教授です。私たちはこのような素晴らしい先達に指導を受け、現在も脊椎外科疾患で苦しんでおられる患者さんの苦痛を少しでも軽くしようと、日夜診療のみならず、研究や若手の指導教育にあたっております。

このような歴史ある東北大学整形外科、脊椎外科グループが中心となった東北大学脊椎外科懇話会には、現在約30の関連病院が参加しています。これらの病院は連携が非常に密接であり、診断から治療まで同じようなレベルの専門家が所属しています。もちろん、施設間では疾患による得手不得手、特殊な手術器械を有する有しないなどの差があります。そのため、疾患や患者さんの要望によっては、受診・診断した病院から他の病院へ移って頂く場合があります。患者さんにとって最適の治療を提供するため、懇話会の仲間たちが一致協力しているのです。本懇話会に所属している(HPのほかのページに掲載されています)施設であれば、全国水準あるいはそれ以上の治療を行ってくれるはずです。日本の脊椎外科のレベルは世界でもトップレベルにあります。安心して受診なさってください。

病気は医療者だけで治すものではありません。医療者と患者さんが一緒になって克服していくものです。担当医と相談してご自身の疾患をよく理解し、症状を緩和し、動ける喜び、歩ける喜びを長く享受するために、最適の治療を選択していきましょう。わからないことや疑問があれば、何なりと担当医にお聞きください。

 

東北大学整形外科教授
相澤 俊峰

 

 

 私たちの懇話会は1987年に発足しました。すでに四半世紀を超える歴史があります。東北大学整形外科とその関連病院の脊椎手術を専門とする医師と脊椎疾患に関心のある整形外科医が集まって運営しています。

 受診する病院ごとに診察の仕方や検査法、診断の基準が違い、さらに手術が望ましいと考えられる病状の範囲(手術適応と呼ばれます)と手術法が違うとしたら、患者さんはどうしたら良いか迷うことでしょう。

 懇話会の第一の目標は、人口約400万人の診療圏に脊椎疾患の高度で安全な、しかも成績の良い診療を提供することです。そのために、勉強会を定期的に開いて一緒に学び、情報・意見交換し、セミナーによって若手を育成しています。さらに共同研究を行って脊椎外科の進歩に貢献しています。そうすることで懇話会の先生方の診療は自然と標準化、統一されています。

 私たちの手術法は5つのLの基本思想に基づくものです。

 1.Less Invasive 患者さんの身体に負担の少ない
 2.Less Complicated シンプルな
 3.Less Fusion 脊椎固定をしない
 4.Less Metal Works 体内金属を使わない
 5.Less Expensive 低医療費の手術

 懇話会は1988年以来、毎年、関連病院に脊椎手術の登録をお願いしています。最新の2019年は25病院で4,401件の手術が行われました。それらのうち、8病院が200件以上、3病院では400件以上でした。内訳は頚部脊髄症が約20%、腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄法がそれぞれ約30%でして、これら3つの疾患で全体の80%以上を占めます。特に、腰部脊柱管狭窄法の手術が増え続けていて、しかも50%以上が70歳以上の高齢の患者さんになっています。

 ときに、上位頚椎や胸椎の疾患、脊柱側弯症、脊椎・脊髄の腫瘍などの頻度が低く、しかも複雑な手術が必要である場合、あるいは病院のスタッフと設備の具合が十分でない場合があります。そうした場合には、それぞれを専門とする脊椎外科医に紹介してもらえます。

 勿論、手術を受けずに済むのが理想です。その点で、懇話会は手術によらない治療である保存療法の研究も懸命に行っています。

 懇話会の先生方の病院であれば、どの病院を受診しても、安心頂けるはずです。

 

国立病院機構 仙台西多賀病院
脊椎脊髄疾患研究センター
センター長 国分 正一
(東北大学名誉教授)

 

〒980-8574 宮城県仙台市青葉区星陵町1-1 TEL 022-717-7245